Case Study

オービス・インベストメンツ:本物の投資アプローチと英国のノウハウを日本の投資家へ

オービス・インベストメンツは、グローバルな株式投資を通じ、運用職人としてリターンで勝負する独立系資産運用会社です。英国領バミューダに本社を置くオービスは、世界各地にオフィスを構えており、中でもロンドンが最大規模の拠点です。ロンドンオフィスには、投資リサーチ、ポートフォリオ・マネジメント、トレーディング、ファンド・オペレーション、法務、コンプライアンスなどの機能があり、ロンドンにおける従業員数は同社グループ全体の約40%を占めています。オービスは、旗艦戦略であるグローバル株式戦略、日本株式戦略を含む単一国戦略、マルチアセット戦略など、多岐にわたる運用戦略を提供しています。機関投資家向けのサービスが主ですが、英国やオーストラリアでは個人投資家向けのサービスも展開されています。

進化する日本の投資需要:英国の運用会社が果たせる役割

日本には、世界有数の運用資産額を誇る機関投資家が複数います。日本の年金市場は世界で3番目に大きく、約3兆米ドルもの規模です。これまで、日本の機関投資家は保守的でリスクを避ける、というステレオタイプで語られてきましたが、それは変わりつつあります。高齢化社会や社会情勢の変化を受け、老後も安定した生活を送るためには、「低いリターンで良いからボラティリティやトラッキングエラーを下げたい」とは言っていられず、高い投資リターンを目指す必要があります。したがって、日本の機関投資家はより高い利回りを求め、海外の独立系運用会社に委託先の選択肢を拡げています。そういった背景から、英国を含む海外で名を馳せてきた優秀な独立系資産運用会社が、日本でも積極的に採用されるようになりました。

オービス・インベストメンツ日本法人代表取締役社長時国司氏は、日英両国で教育を受けキャリアを積んできた経験から、従来の日本とは異なる投資アプローチを英国から持ち込むことに大きな可能性を感じています。時国氏は、とりわけオービスの資産運用に対する観念が日本の資産運用業界に必要な変革をもたらすと考え、それまで日本にプレゼンスを持たなかったオービスの創業者及び経営陣を説得して入社に至り、日本への進出を実現しました。そして現在では、日本を代表する某機関投資家から独立系運用会社として最大規模のマンデートを受けるなど、英国同様日本でも確固たるプレゼンスを構築するに至りました。日本市場参入までの道のりについて、時国氏にお話を伺いました。

オービスの日本での事業について教えてください

オービスは、2016年に日本で金融商品取引業登録をしました。オービスは拡大志向ではないので、どうしても必要な人材しか採用しませんが、日本の機関投資家様からのお預かり運用資産の急速な増加を受け、実質2名で開始した日本法人は数年のうちに10名を超える陣容になりました。

Newcomerとして、どのように日本市場に参入したのでしょうか

日本の機関投資家は長期目線で投資をするため、資産を預ける運用会社のことを深く知り、長期にわたる信頼関係を構築するよう努めます。これは弊社の運用哲学と共鳴するものです。弊社は、「運用商品は売るべきものではない。」という信念を持っており、創業来営業チームを持ちません。我々のコアバリューや運用アプローチに共鳴されるお客様が口コミで増えた結果、4兆円を超える運用資産に至りました。日本でも、研究者の方がご紹介くださったり、英国大使館や東京都が開催された非商業的なイベントを通じて弊社に触れてくださったりした結果として、ご投資に至る機関投資家が増えてきました。

オービスが英国で積み上げた知見は日本の市場にどのように貢献しているのでしょうか

英国の資産運用業界は、長い歴史を持ち、投資手法やリターンの面でも高い競争力を誇っています。弊社においても、英国法人は重要な役割を担っています。

「英国の資産運用会社は、長い歴史のなかで、高いリターンを生み出す運用能力を培ってきました。英国で数十年間戦い抜き、その結果築いてきた確かな実績は、日本で認められるに値するものです。弊社の日本におけるお客様も、弊社英国法人をしばしばご訪問されます。

英国の資産運用業界は、卓越した才能を持つ人材を世界中から数多く惹きつけます。私自身も、アジア出身でありながら、ロンドンオフィスで採用され、オービスに入社しました。」

弊社の日本法人は、英国法人と密に連携して業務を行っています。日本で提供しているファンドは、ロンドンを主な運用拠点として調査分析を行っています。また、英国法人は、日本法人の機能の一部をサポートしており、日本における弊社のお客様は、東京の現地チームからサービスを受けることはもちろん、英国のチームからも話を聞くことができます。また、ファンド・オペレーション・チームやコンプライアンス・チームは、日本のお客様に最高水準のサービスを提供するために、英国の各チームと日々連携を取っています。

日本でのプレゼンスを構築するうえでの最大の課題はなんだったのでしょうか

人材採用です。日本のビジネス上の文化や資産運用業界の慣習は、英国とは大きく異なっています。また、お客様と長期的な関係を築くには、日本語を話せることがほぼ必須条件です。弊社の企業文化に適合するバイリンガルの人材を採用するのは容易ではありませんし、言語の壁に鑑みると、英国から既存スタッフを異動させることも効果的とはいえません。

人材は、弊社の中核をなすものです。そのため、我々は人材の質について一切妥協せず、時間をかけて現地での採用を続けてきました。結果として日本における活動のスピードが削がれるとしても、質の高い人材が見つかるまでは採用しません。そして、採用後、原則として全員が英国でトレーニングを受けたうえで仕事を始めます。このことからも、英国が資産運用の人材ハブであることが窺えます。

 

Image ©Yota Suzuki

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